こどもの眼 1月号 園長 早川 成 
2018/02/03

「こどもの眼」 
〜 もりぞうさん 〜  
園長 早川 成

その人は森の中に住んでいます。1年前…、いや2年前だったでしょうか?年長さんが高良山の森に遊びに行ったときに突然現れたのです。森の中から斜面を駆け下りてきて、子ども達の前に飛び出してきた時の子ども達のビックリした顔、引きつった顔、思わず後ずさりしたり、先生にしがみついたりする姿を思い出すと、今でも吹き出しそうになります。昨年度は夏のキャンプの時に背振の森にも来てくれました。今年度は5月の森遊びの時に初めてお見えになり、森の面白さや、森で遊ぶ時に気を付けること等を子ども達に教えてくれました。その後、7月のキャンプが豪雨で中止になった時には心配して園まで来てくださり、残念がっている子ども達に豚汁をつくってくれました。9月に延期になったキャンプがまたもや台風のために園舎での一泊二日になってしまいましたが、今度はドラム缶風呂を沸かしてくれたり、朝ごはんにメザシを焼いてくれたりと、大サービス。薪で焚火をおこすことの面白さを教えて下さいました。その結果、すっかり焚火に魅せられた年長さんは今、自分達で火をおこしてつくる「鍋会」に挑戦していますが、もりぞうさん≠ノは、そこでも大変お世話になっています。
森に焚き木を拾いに行ったときにも森の中からひょっこり現れたもりぞうさんに、子ども達は大興奮。何をしに来たのかを一生懸命説明する子ども達に、よく燃える木と燃えにくい木の見分け方や、丁度良い枝の太さや長さについて教えてくれました。
さて、鍋会に向けて話し合いを重ねていた子ども達は、火のおこし方をもりぞうさんに教えてもらおうと手紙を書くことを思いつきますが、どこにいるのかわからないもりぞうさんにどうやって手紙を渡すかに悩みます。そして、キャンプの夜に遊びにやってきた森の守り神まっ黒くろすけ≠ウんなら、きっともりぞうさんの居場所を知っているはずだと考え、くろすけさんとの通信手段である「くろすけポスト」に思い思いに手紙を書いて入れました。ところが、そのうちの一通に「あさ、はやくきてください。」と書いてあったので、もりぞうさんは、なんと前日から園庭にテントを張って泊まり込みで来てくれたのでした。朝、登園してきた子ども達は、すぐさまテントを見つけ集まって来ます。「テントだ!」「なんで?」「中に誰かおる!」「動いた!」とだんだん騒ぎが大きくなりますが、そのうちに、ちょっと中を覗いてみようと誰かが言い出し、好奇心と勇気の持ち主がテントのチャックを開けてのぞき込みます。「あっ、もりぞうさんだ!!」と叫んだタイミングで、もりぞうさんがテントから出て来ました。ひとしきりもみくちゃにされた後で、いよいよ火のおこし方の講習会?が始まると、年長さんはどの子も真剣です。焚き木の種類、薪のくべ方と火力の調整、道具の使い方、危険なことや気を付けること等、正直こどもには難しいと思えるようなことも、もりぞうさんが質問すると、子ども達は一生懸命考えてしっかり答えています。そんなやりとりの中で、もりぞうさんが一つ一つ子ども達の反応を確かめるように話してくれるのを、みんなうなずきながら聞き入っています。ものすごい眼の光と集中力で、見ていて感心してしまいました。
ところで、もりぞうさんは、私(早川)と見間違うほどそっくりで、背格好も風貌も瓜二つ。それで、子ども達は最初、「早川先生やろ?」とか、「絶対、園長やん!」と言っているのですが、一緒に遊んでいるうちに、いつの間にか「もりぞうさん!」と呼ぶようになり、久しぶりに会うと「あっ!もりぞうさんだ!!」と、人なつこくしがみつくようになりました。そんなもりぞうさんについて、わかる範囲でご紹介します。
名前:もりのもりぞう、年齢:不詳(覚えていないらしい)、住所:お気に入りの森、職業:なし(自給自足と物々交換)、虫や動物など自然に詳しい(但し学術的な事はわからない)、勉強は苦手(遊ぶのは好き)、文化的な生活が嫌い(電気ガスなし、時計やカレンダーもない)、神出鬼没で謎が多い、いつも楽しそうにしている、たぶん子どもは好き…と、こんな感じですが、興味のある方は年長さんに直接聞いてみて下さい。(但し、個人情報ですので取り扱いにはご注意を…)
では、紙面の都合もあり今月はここまで。この続きは次号で、もりぞうさんの人気の秘密を探ってみます。 つづく

げんきワールド2月号 体育講師 手嶋和仁先生
2018/02/03

先日、久しぶりに長崎の島に泊まりがけで“釣り”に行ってきました。一年の中で最も寒い時期ですが、意外にも、釣れる魚種も多く、寒い中で火を囲んで食べる暖かい料理は格別なので、毎年出かけているのですが…最近は歳のせいか、寒さに弱くなってきました。そこで、普段ほとんど使うことはないのですが、“使い捨てカイロ”を身体にいっぱい貼ってみよう!と思い、島に沢山のカイロを持って行きました。日が暮れた辺りから、だんだんと冷えてきたので、いよいよカイロを身体に貼っていきます!どう貼ろうか考えた結果、“ヒートテック”の上から貼ることに。前に4枚、後ろに6枚、計10枚のカイロを貼っていく様子を見ていた友達の「貼りすぎやろ?」と言う声に耳を貸すこともなく、準備オーケー!    …結果、上半身だけが尋常じゃないぐらい熱くなり、あっという間に10枚だったカイロは2枚に減りました…カイロってすっごく熱くなるんですね…びっくりしました…興味がある方は…いや、真似はしない方が良いです…
さて、この時期は園や、お家で“縄跳び”の練習をしている子が多いですよね!「ずっとやってるんだけど、中々ねえ…」という、お家の方も多いはず!毎年この時期の“園便り”で書いているのですが、今回は縄跳び上達のポイントをいくつか書いていきますので、お家で練習するときの参考にしてみてください!
      【縄を回す力が、強すぎたり、弱すぎたりしていませんか?】
  子供達には、“中くらいの力”と言っていますが、縄を回すスピードは大事です。弱すぎると
  上手く回らないし、強すぎると縄が地面に当たった後跳ね返るので跳びづらいですよね。
      【ジャンプの高さは?】
  これも大事なことで、ジャンプが小さいと引っかかりやすいのは勿論、必要以上に大きく跳びすぎると早く疲れてしまいますよね。これも“中くらい”が大事!
      【ジャンプの後は?】
  ジャンプの後というのは、いわゆる“着地”の事なのですが、この着地も大事で、特に、続けて跳べるようになってきた時は、ドタバタと強く足をつかないように、跳んだ後、一回一回しゃがみ込まないようにすること。理想はかかとを浮かせて…です。
      【続けて跳ぶことができない…】
  1回は跳べるけど、2回目の縄が回らない、または一回跳んだら縄を回すのをやめてしまう…
  実はこの“2回続けて”というのが縄跳び上達のための大きな“山”となっています。大人が考えると、“体の横で肘から下を使って手首を回せばいい”という事はすぐにわかるのですが、子供達に最初に言っても、「???」となってしまいます。そこで、効果的なのが、1回跳んだら、2回目の縄をすぐ回す練習をする方法です。声を出して「い〜ち、に!」と一回で終わらないように声をかけてあげるといいですね。(2回目に回す縄は、引っかかってしまってもオッケーです!手を止めずに回す事が大事)その時に、最初は肩の上から大きく縄を回してしまうでしょうが、それでも大丈夫です。段階的に少しずつ、手の位置が下がってきます。周りのお友達がどんどん跳べるようになってくると、心配になってくるかもしれませんが、ゆっくり焦らず、そして何より“楽しく”が大切ですよ!

こどもの眼 1月号 園長 早川 成
2018/01/12

「こどもの眼」 
〜おやじのスイッチ〜  
園長 早川 成

先月号で、あそび塾で山登りをした時の様子をご紹介しました。ご存知ない方のために簡単にご紹介しますが、あそび塾というのは親子を対象にした「遊び会」のようなもので、2014年に始まりました。年に6回、20組程度の参加者を募って隔月で開催しています。男子教師と焼鳥屋で飲みながら話をしていて思いついた企画で、ややこしいことや難しいことは抜きにして「とりあえずやってみるか!」ぐらいの軽いノリで始めました。三年前、第1回目の案内をご紹介します。
「こどもは、食う・寝る・あそぶ≠ナ生きています。なかでも、あそび≠ヘ子ども
達が成長するために、三度の食事に負けないぐらい大切な栄養。そして、睡眠と同じくらい欠かせない大事な時間です。
この度、天使幼稚園(当時はまだこども園になっていませんでした)では、お休みの日の子ども達の「何して遊ぶ?」「誰と遊ぶ?」に応えるため、そして、お父さんやお母さんの「どこに行く?」「どうやって遊ぶ?」を応援するために、天使流あそび塾≠企画しました。
学習塾があるんだから、あそびの塾があっていい。でも、大きな違いが一つだけ。それは、あそび塾は「教えない!」ってこと。何をするにも「自分でやってみる」と「自分で考える」を大事にします。「なんだ、そんなことか…」って声が聞こえてきそうですが、これがなかなか難しい。だって、あそび≠チて、上手くいったりいかなかったり、面白かったりつまらなかったりしますからね。そんなときに「どうするか?」も子どもは自分で考える。そして大人は、口出し手出しを我慢する。それが、天使あそび塾≠フ、たった一つのきまりです。
こどもも大人も関係なし!みんな夢中になって、思いっきり遊びましょう!週末の一日が、きっと、楽しくていい時間≠ノなると思っています。」
というものです。内容は、泥だんごづくりや木工、山登りに川遊び、ひみつ基地づくり、給食の先生に教えてもらってパンづくり、焚火で鍋をつくったりピザを焼いたりの野外料理、電車に乗って福岡まで出かけ、オープントップバスに乗って市内を回り、大濠公園で弁当を食べ、帰りに思い付きで空港まで行き飛行機を見て帰るという、乗り物三昧のミニ旅行もありました。
真面目にやると、仕事のようになってしまい続かないので、「何して遊ぶか?」のテーマ決めと前日の打ち合わせは毎回焼き鳥屋。あそびのことは遊びながら考えた方がいいアイディアが出るのです。(但し、飲み過ぎるとせっかく思いついたことを忘れてしまう恐れがありますが…)面白がってやり始めてみると、これがなかなかに楽しく、また奥深いものもありまして、いつの間にか4年も続いているという訳です。
さて、先月のこどものスイッチ≠ノ続いて今回のテーマはおやじのスイッチ≠ナす。
10月の末に「おやじの会 第1回森の作業会=vのご案内をさせていただきましたが覚えていらっしゃいますでしょうか?
実はこの度、知り合いのご厚意で耳納連山の麓に農地をお借りすることができ、「天使こども園キッズファーム構想・農トレ<vロジェクト」という名称の企画を立ち上げました。最近はやりの脳トレ≠ナはなく農トレ≠ナす。当園には「教育よりも響育を」というキャッチコピーがありますが、それに加えて「脳育ではなく農育を」という教育方針をご理解いただければと思います。おやじの会≠ナ飲むたびに「山が欲しい」「森が欲しい」とつぶやいていたのが、ついに現実となりましたので、早速お父さんたちを募って森に行くことになりました。
当日、皆さん思い思いの服装と道具を携えて集合しました。私はそれを見ただけでテンションが上がったのですが、お父さん達も現地に入ったとたんにスイッチが入ったようで、ノコやナタで枝を落としたり、木を倒したりし始めると、一気にアドレナリンが体中を駆け巡り始めました。木を倒すたびに歓声を上げ、木に登り、ツルにぶら下がり…と、こどものように大はしゃぎしながら森のおやじ≠ニ化しました。
昼食は各自弁当持参でしたが、地主さんが鍋を用意してくださっていました。焚火をおこすと雰囲気がまた一段と盛り上がります。皆で火を囲んで温かい鍋をつつき合いました。
体育教室の手嶋先生も先月号の「げんきワールド」に書いていましたが、男はいつまでたっても「こども」の部分があり、その本性が何かのきっかけで現れます。今回感じたのは、「倒す・壊す・燃やす」などの破壊的なことは基本的に好きで興奮するということ、そして「森を開拓する」という目的が、これまたモチベーションのスイッチに直結しているということです。「童心に帰る」とはまさにこのことだと思いました。
おやじのスイッチ≠熬身はこどものスイッチ≠ニ同じ。つまりは遊び心≠フスイッチのことだと思います。あそび塾も農トレ≠焉Aこの遊び心≠育てることが大きな目的です。幼児教育の目的を一言で言えば、子ども達の「生きる力」を育むことだと思いますが、では「生きる力」とは何か?と問われたら、私はこの遊び心≠真っ先に挙げたいと思います。
地位や名誉や財産を手にした人、成功者と呼ばれる人はこの世の中にたくさんいます。強く生きている人や上手く生きている人も周囲を見渡せばたくさんいます。でも、豊かに生きている人、自分らしく生きている人は必ずしもそういう人たちばかりではありません。自分らしく豊かに生きるために、私はこの遊び心≠ェとても大切だと思っています。
 「夢を見る一年に!」とmyテーマを掲げた2017年は、一歩前進できたように思います。新しい年を迎え、その夢の続きを森の中に描きながら、遊び心のスイッチ全開で過ごしていきたいと思います。皆さんご一緒に楽しみましょう!今年もどうぞよろしくお願いいたします。

げんきワールド1月号 体育講師 手嶋和仁先生
2018/01/12

新年明けましておめでとうございます!いよいよ長男の高校受験が間近に迫り、なんだか落ち着かない日々を送っているのですが…そんなプレッシャーからか、年末に熱発してしまい、年が明けるとびっくりするぐらいに歯茎とほっぺたが腫れ、眠れないほどの痛みが…そんなわけで年末年始は病院通いが続きました(あ、長男ではなく僕のことです…)昔から年末年始になると、身体に異常が起きることが多く、何年か前のお正月には、何だか息苦しくて目を覚ますと“のどちんこ”が、びっくりするぐらい伸びて舌の上に乗っかっている…という世にも恐ろしい経験もしました…長い休みにはいると、どうしても生活リズムが崩れがちになってしまい、間違いなくそれが原因になっているのでしょうが、歳を重ねるごとに身体が敏感に反応してしまうようになっているようで…“規則正しい生活を心がける”当たり前すぎることですが、どうやら今年一番の目標になりそうです…とほほ…と、何年か前のことを思い返していると、10年以上前の“凧あげ”の記憶がよみがえってきました…その日はかなり良い風が吹いていて絶好の凧あげ日和!家族と甥っ子を連れ、はりきって河川敷に出かけました。凧を上げ始めると、強い風のおかげで、あっという間に空高く上がっていきました。遠くに飛んでいるラジコンのヘリコプターよりも遙かに高く上がった凧を指さし「ほら!あそこあそこ!高いやろ!」と、当時3〜4歳だった長男に自慢げに見せると「僕も持ちたい!」と長男。「すごい力やけん、ぎゅ〜って持っときーよ!」と言って糸巻きを手渡すと、なんとか一人で持てる様子。僕の真似をして凧をぐいぐい手で引っ張る様子が、とてもおかしく可愛かったので、記録に残しておこうとカメラかビデオを車に取りに行こうとした矢先、凧を持った長男が急に走り出しました!これも僕の真似だったのでしょうが「これは、いかんぞ!」と思った僕は、少し離れた長男の所に駆け寄りながら「やめろ〜!走ったらいか〜ん…あっ!!」予想どおり、長男はダイナミックにずっこけ、その拍子に持っていた糸巻きを離してしまいました。自由になった凧は、それはそれはすごい勢いで遠くに飛んで行きます!そう…遠くの遠くのラジコンヘリが飛んでいる方へ…「やばい!」そう思った僕は、凧を追いかけ正月早々の全力疾走!しかし、凧はどんどんヘリコプターに近づいていきます!「糸がヘリコプターに絡まったら…」走りながら、みるみる血の気が引いていきます。ジェットエンジンでも搭載しているかのようなスピードの凧に、ぐんぐん引き離され、半ば諦めかけ、走るスピードもゆっくりになってしまった僕の目に見えた物は…飛んできた凧糸を脇に挟みながらヘリを操縦するおじさんの姿!「オー!グレイト!」と言ったかどうかは定かではありませんが、間違いなくうちの凧糸を脇で挟んでいます!走ってきた僕に「早くはやくっ!」と、おじさん。「すみません!助かりました!ありがとうございます!」と言いながら凧糸をうけとった瞬間…ヘリが上下左右に大きく揺れだしたのです!必死に操縦するおじさん!ヘリとおじさんを見ながら「がんばれ!落ちるな、お願いだから落ちてくれるな!」と必死に祈る僕…「あ、あ、あ、ああ〜っ!」「ガッシャ〜ン!」祈りむなしく、ヘリは墜落…見事にばらばらになってしまいました…「うわー!落ちたー!」等と言えるはずもなく、「すみません、すみません、うちの凧のせいで…」と、謝る僕に「お兄ちゃんのせいじゃないよ!大丈夫!直る直る!」と、どう見ても直りそうにないヘリをさわりながら笑顔のおじさん…「いえいえ、お高い物でしょう?おいくらかだけでも…」と、修理代の話をする僕に、やはり笑顔で「いいといいと!お互い様やけん!」と、とっても心が広いおじさん…お互い様って…一方的にこっちが悪いのに…「本当にすみませんでした…」と何度も謝る僕に「いいとよ!」と最後まで笑顔でいてくれたおじさんの目は明らかに、もの凄く悲しい目をしていました…凧を持って家族の元に戻るとみんなでケラケラ笑っています。僕が「笑い事じゃないったい!」と言うと、「だって頭下げてるのが“バッタ”みたいって甥っ子が言うんやもん!」と、嫁…愕然としましたが、いわれてみると確かにバッタみたいだったかも…みなさんも凧上げには十分ご注意を…

こどもの眼 12月号 園長 早川 成
2017/12/04

「こどもの眼」 
〜こどものスイッチ〜  
園長 早川 成

先日あそび塾≠ナ山登りをしました。標高は秋の遠足で登った高良山よりも高くハードな行程でしたが、お兄ちゃんと一緒に二歳児の弟くんが参加したご家族があり、ご両親揃って一家全員での山登りとなりました。登山道の看板前でルートを説明し、民家を抜け、林道を通り、15分程度で登山道の入口に到着。コース表示の先は急斜面で、ロープにつかまってよじ登ると、あとはいよいよ登山の雰囲気満載の山道です。木々に囲まれた森の中、道は狭く、石がゴロゴロで歩きにくく、坂は険しく、キツくなります。私の前をご両親と歩いていた弟くんは次第に無口になると、ついに我々が登山や遠足で最も恐れる「抱っこして」の言葉が…。「もうちょっと頑張ろう!」「あれっ、お兄ちゃんの声がする!」「大丈夫、歩ける歩ける!」と一生懸命に励ましたりなだめたりするのですが、「イヤだ!歩かん」「歩けん、抱っこ」と泣き声は更に激しくなるばかり。お父さんの腕にぶら下がって全く歩こうとしなくなってしまいました。仕方なくお父さんが抱っこして歩きながら、時々降ろしたり、お母さんが前を歩きながら誘ったりしますが、なかなか効き目はありません。最後尾を一緒に歩きながら「昨日の晩は、すぐにでも出発したいぐらい楽しみにしてたのに…」「イメージが思っていたのと違ったんでしょうね」と話をしましたが、私は長男が幼い頃、初めてフェリーに乗ったときのことを思い出していました。船に乗るのを楽しみにしていた息子は、港に着くと大喜び。「あれに乗る」「早く行こう!」とはしゃいでいます。当時あまり機会のなかった家族揃ってのお出かけで、微笑ましく和やかなムードに包まれたまま、乗船口からフェリーに乗り込み、デッキに上って「さぁ出発!」とその時です。息子が発した言葉は「早くお船に乗ろう!」まさかの展開に私は「え〜っ?」と絶句しながら、一生懸命「今、船に乗ってるんだよ」と説明するのですが、フェリーが動き始めると、港に泊まっている船が遠ざかっていくのを見た息子は「あれに乗るぅ」「船が行っちゃう!」と大騒ぎ。船に乗ってしまうと自分が今そこにいるということがわからなくなってしまったのでした。正月に息子が帰ってきたら、このエピソードを肴に一杯やるのを楽しみにしたいと思います。
さて、話を山登りに戻します。登り始めたばかりという時点で「歩かない」と言い出した子の、やる気のスイッチ≠どうやって入れるか、お父さんとお母さんは一生懸命考えていました。私も何かいい方法(というか、きっかけ)はないかといろいろ思い巡らせていました。そんな時、お父さんが「ちょっと先に行ってみよう!」と、最後尾から先に進み、前を歩いている列の中に入って行かれました。しばらくして、私がその子に会ったのは皆が集まっている休憩場所。お茶を飲み、飴を口に入れ、汗を拭いたり、はしゃいだり、一息ついておしゃべりを楽しんでいる場面でした。お母さんと目が合うと、にっこり笑って「スイッチが入ったみたいです」と一言。あとは、しっかり自分で歩いて登り無事に頂上に到着。少し遊ぶとお腹がすいたので、まだ10時過ぎでしたが、山頂でのサプライズ。キャンピングガスでお湯を沸かして温かいスープをプレゼント。持ってきたおにぎりと一緒に早めのお昼を食べて、あとはいっぱい遊びました。
さて、帰り道は?もう当たり前のように自分で歩きます。道が悪く滑って転ぶのが危ないのでお母さんと手をつないで降りていましたが、道幅が狭く横に並んで歩けないので、子どもが先に行くと大人の方が前かがみになって危険です。そこで、一人で行かせてみると意外と大丈夫…というより、怖がるどころか、むしろ不安定な道や段差を降りるスリルを楽しめるようになりました。通る道を自分で選んだり、危ないときは木につかまってブレーキをかけたりするようになり、尻もちのつき方をお覚え、傾斜に合わせ重心を移動させながら半身の体勢になって降りるなど、体の使い方やバランスのとり方が上手になっていきます。抱っこをせがんだあたりまで降りると、まるで何事もなかったかのように、山登りを楽しむ顔になっているのを頼もしく感じました。
今回、改めて「経験は力なり」ということを感じました。森の匂い、冷たい空気、鳥の声、山頂の景色、温かいスープ、木のブランコの揺れ…どれだけ五感を働かせたでしょう。足の踏み場を確かめ、地面にしがみついて斜面を登り、木の枝や石ころを拾い…どれだけ身体を使ったでしょう。「ヤッホー」「頑張れ〜」と声をかけ、泣き笑いし、手をつなぎ、誘い合い、じゃれ合って遊び…と、どれだけ心が動いたでしょう。それを全部ひっくるめて山登りを楽しんだ経験が、全て子ども達の力になっていると信じます。
子ども達は、楽しいと思うこと、嬉しいと感じること、もっとやりたい、と思える経験によってスイッチ≠ェ入ります。やる気のスイッチは元気のスイッチであり、学びのスイッチでもありますが、そのこどものスイッチ≠ヘ、残念ながら大人が直接入れることができません。飴ちゃんパワー≠ヘ確かに威力がありますが、超ハードな山道を二歳児が歩ききったのは飴の力だけではありません。彼のスイッチを入れたのは、「こども同志の力」であり「森遊びの楽しさ」でしょう。我々も、子ども達に負けないように、元気のスイッチを沢山見つけたいものですね。
ちなみに、私のスイッチは、子どものスイッチを見つけた時に入ります。

げんきワールド 12月号 体育講師 手嶋 和仁先生
2017/12/04

 “○○ロス”…きちんとした言葉かどうかはよく分かりませんが、今年は、やけにそんな言葉を耳にする機会が多かったような気がします…そんな僕も、只今“ラグビーロス中?”でありまして…というのもラグビーをしている、うちの子供達、中三の長男は夏に引退、そして、つい先日、小6の二男も、小学生最後の大きな大会を終え、子供達のラグビーの試合がなくなってしまいました…今年は子供達が中学、小学の最上学年ということもあり、週末は試合また試合の連続で、試合が重なって、奥さんと僕が別々の会場へ…なんて事もよくありました。そんなラグビーづけの一年を過ごしていたのですが、二男の最終試合を終えた途端、ポッカリと穴が開いたような感じになってしまいました。勝手な物で、試合が多いときは「は〜?また試合かよ〜」なんて言っていたのですが、いざ試合が無くなってしまうと、なんだかとっても寂しくなりまして…日曜日は朝早くから、遠征に行くことが多かったのが、今は何をして良いのかよくわからず、朝早くから温泉に浸かったりしています…とはいえ、長男は高校に行ってもラグビーを続けるようですし、野球も大好きで、中学に上がったらラグビーか野球か少し考えていた二男も、中学校でも野球ではなく、ラグビーを続ける決意が固まったようなので、来年になれば、また、ラグビーづけの生活に戻るのでしょうが…今のうちに、ここ2,3年激減していた“つり”に行く回数を増やそうかと計画中なのですが…それはそれで、奥さんから「は〜?また釣り行くと〜?」なんて言われるんですよね…
あれやこれや、ちょうどいい加減でいろんなことができればいいんですが、なかなか…ですね…
 さて、先日、天使のお父さん達と一緒に“森の作業”に行ってきました!はじめて行く森を想像し、「どんなところかな♪」と、ウキウキ気分で現地へ!着いてみて「わ〜おっ!」かなり長いこと人の手が入っていないとは聞いていましたが…なかなかの荒れ具合!開拓のしがいがあるという物です!竹を切っては運び、木を切ってはまた運び…かなりの重労働でしたが、子供達が、ワイワイと遊ぶ姿を想像しながら、お父さん達とワイワイ作業をたのしむことができました!5時間ぐらいの作業だったでしょうか?帰る頃には見違えるようにスッキリとした森の姿に「おお〜っ!」と歓声が上がるほどでした!それにしても、びっくりしたのは、お父さん達が色々な“マイ道具”をもっている事!それと、“フットワークの軽さ”!握るところも、足をかけるところもないような木に、するすると登り枝を落とすお父さんがいたかと思うと、まだ、根っこが結構しっかりとしている木を「ふんが〜!」となぎ倒すお父さん!その他にも色んな分野で、それぞれ詳しいお父さんがいて!そんな、見た目も年齢も様々?な、お父さん達に共通していたのは“少年のような瞳”!やっぱり男はいつまで経っても“男の子”なんですね!いや、男の子の心を持ち続けないとだめですよね!
ね?早川先生!!
 まだまだ沢山の作業が必要だと思いますが、みなさんで力をあわせ、知恵を絞り、素敵な子供達の居場所になっていくと良いですね!

こどもの眼 11月号 園長 早川 成
2017/11/10

「こどもの眼」 
〜 関わりの中で 〜  
園長 早川 成

この季節は人前で話す機会が増えます。行事で保護者の皆さんの前に立つことも多く、また園児募集の時期でもあり、天使こども園が「何を目指しているのか」や、「日頃こども達とどう関わり、何を感じ、どのように捉え、どう育てようとしているのか」を、園長として何とか言葉や文字にして伝えるのに一生懸命なのでした。
さて、「ロードレイジ」という言葉をご存知でしょうか?車を運転中、追い抜いたとか割り込んだとかで相手の運転に腹を立て、過激な報復行動をとることが、最近大きな社会問題になっています。行動の抑制が効かず、感情のぶつけ方や治め方が、ますます直情的になっている現状に、ケンカの仕方も教えないといけない時代になった気がしています。そういえば以前このコーナーで、ケンカをテーマに書いたことがあるのを思い出しました。
門に立っていたときのことです。大きい声がしたので振り返ると、ケンカが始まっていました。近づいてみると、砂遊びのバケツを二人の子が取り合っています。こひつじさん(年少少さん)が黄色のバケツを持っていて、中には子ども達がチョコレートと呼ぶ泥(砂と水がうまい具合に混ざり合ってトロトロになっているもの)が入っているのですが、それを年少さんが奪おうとしているのです。そばに青色のバケツが落ちていて、それがどうも年少の子のものらしいのですが、中には、同じように砂と水を混ぜてはあるものの、そんなにトロトロではない泥が入っていました。
ほのぼのとしたケンカを想像している方がいらっしゃるかもしれませんが、いやいやどうして、これがなかなかの迫力で、意地でも取り上げようとする年少さんも、奪われまいと必死で抵抗するこひつじさんも、お互いに絶対に引けない様子です。真剣にやりあっている二人には悪いのですが、こんなときに間に割って入ってすぐにケンカをやめさせることほど野暮なことはありません。むしろ止めるよりもやらせないといけないと思っていますので、物で叩く・投げる・噛みつくなど、危険がないようにだけ注意して見守っていると、騒ぎを嗅ぎ付けた子ども達が集まって来て人だかりができました。
特に興味深いのは、どこからともなく駆けつけてきた年長さんが、いつも真っ先に関わるということです。最初は「ダメだよ」とか「貸してって言ったの?」とか、マニュアルどおり?に声をかけていましたが、そんな生半可なことでは治まりそうにないので、ちょっと考え込んで、説得を試みはじめました。「あきらめた方が貸してもらえるよ」とか、「貸してあげた方が長く遊べるんだよ」とか、「ケンカはしないほうが、結局は得をするんだよ」みたいなことを言っているので、思わず吹き出しそうになったのでした。「損して得とれ」のような処世術を説いている年長さんが、すごく大人に見えて可笑しかったのでした。
しかし、こひつじさんと年少さんにそんな説得が通用するはずもなく、バケツの引っ張り合いは、ますます激しくなる一方です。しばらく様子を見ていましたが、さすがに使っていたバケツが奪い取られるのを良しとすることはできず、バケツから手を離すように二人に言って、とりあえず私が預かりました。そして、泣いているこひつじさんにバケツを返して落ち着かせながら、年少さんの言い分を聞くと、「コップとスコップを持っていて、バケツまで持っているのはズルイ」と訴え始めました。ここで、いよいよ年長さんの出番です。私が「コップもスコップもあっちにいっぱいあるよね?」「一緒にチョコレートつくってあげたら?」と応援を要請すると、「うん、作ってあげる」と言ってくれました。でも、バケツが手に入らなかったことに納得できなかった年少さんは、残念ながら怒って行ってしまい、結局その場では解決をみないままにケンカが終わってしまいました。
しかし…です。門を閉めて職員室に向かって園庭を歩いていると、年長さんの女の子が二人、青いバケツを持って走ってきました。見ると、トロトロのチョコレートが溢れるぐらいいっぱい入っています。そう、あれからずっと、一生懸命つくってくれていたんです。私は急いで周囲を見渡し、遊んでいる年少さんを見つけて呼びました。やってきた年少さんは、青色のバケツに入っているチョコレートを覗き込み、嬉しそうに触りはじめました。そして、「ありがとう」とひと言。年長さんの二人も満足そうに笑っています。年少さんはもう怒っていたことさえ忘れてしまっているかのよう。私は、改めて「こどもっていいな!」と思いながら職員室への階段をあがりました。
こども同士のケンカにはドラマがいっぱい!自己主張をぶつけ合い、思い通りにならないことも経験し、本人だけでなく周囲で見ている皆も人の気持ちを思いやることや、折り合いのつけ方を学びます。この時期のケンカはこどもの宝物。止めるよりもさせかた≠ェ大事だと思います。
いかがでしょうか?ケンカやトラブルは、人と人との間で起こるものですが、解決するのもまた人なんですね。
子ども達を、物や方法ではなく、人との関わり合いの中で育てる園でありたいと思います。

げんきワールド 11月号 体育講師 手嶋 和仁先生
2017/11/10

朝晩はすっかり寒くなりましたね。運動会も終わり、ほっと一息…気が抜けてしまったのか、先月書いた“ぎっくり背中”になってしまいまして…そんなにひどくはなかったのですが、どうしても背中をかばってしまうので、あちこちが痛くなり2〜3日はとてもつらかったです…これから寒くなってくると、子供達も体調を崩しがちになりますよね。うがい手洗い、よく食べ、たっぷりの睡眠を心がけ、元気に冬を迎えたいものですね!
 さて今年の運動会、予定通りだと、もうひとつの園の運動会にも行かなければいけなかったのですが、前日の雨のおかげ?で一日、天使の運動会にいることができました!凄く暑い一日ではありましたが、子供達のがんばりや、子供達を見守るお家の方、そして先生達の表情もゆっくり、しっかりと見ることが出来ました。たくさんの応援ありがとうございました!!子供達、本当によくがんばっていましたね!!
そんな、頑張った子供達へのご褒美として、毎年、運動会後の体育教室では“ゲーム”をたくさんします!年中さんは、はじめての“ドッジボール”年長さんは“野球”や、ドッジボールが進化した“王様ドッジボール”“スーパードッジボール”等をやっています。
少しルールが複雑になってくるので、最初の方は???といった感じの子供達もいますが、回を重ねるごとに、ルールを理解していき、楽しめるようにもなってきています。チームで力を合わせること、大きな声で応援したり、励ましたりすることの大切さを、色々なゲームを通して感じてもらえればなあ…と思っています!
毎年、運動会が終わって最初の体育教室では、「あれ?なんかみんなの顔が違う!なんでかな?…あっ!そうか運動会の練習や、運動会をがんばったから、前よりもお兄さんお姉さんになったんやね!」みたいな事を、おおげさに子供達に言っているのですが、先日の年長さんの体育教室でのこと…その日は雨で、室内での体育教室だったのですが、担任の先生からの“オッケーサイン”が出たので部屋に入ると…びっくりするぐらいかっこいい体操座りで、まっすぐに僕の顔を見つめる子供達が!僕が来る前に「手嶋先生をびっくりさせよう!」みたいな話が先生からあったのでしょうが、あまりにもかっこよかったので「あれ?間違えて○○小学校に来たのかな?」「おかしいな?」なんて、部屋を出たり入ったりしていると、「ここは3年4組ですよ!」と、あおるT野先生。それならば…と、実習で年長さんに入っていた男子学生(学校の先生っぽかった?ので…)に「○○小学校の先生ですよね!」と、ふると、しっかり、はっきりとした口調で「いえ、僕は○○大学から来た教育実習生です。」と答えられまして…実習のお兄さんを、おじさん達の(※T野先生含む)“悪のり”に引きずり込もうとしていた僕は、なんだか“カーッ”と恥ずかしくなってしまいました…実習のお兄さん先生…ごめんなさい…
若い子達には僕たちの“良い悪のり?”は、理解しがたい物なのでしょうか…子供達を盛り上げようとやっているつもりなのですが…どうですか?T浪先生…?

こどもの眼 10月号 園長 早川 成
2017/10/03

「こどもの眼」
〜 意味がない? 〜 
園長 早川 成

「もう、何しよっと?ちゃんとせんね!まったく、意味がないやろ!」
雨の日に門でよく見かける子どもとお母さんの一幕ですが、どんな光景かわかりますか?
お母さんは雨の降る中、子どもの手を引きながらあきれ顔で急ぎ足。子どもはそんなことはお構いなしで、むしろ晴れた日よりも嬉しそう。笑顔でフラフラと、またはモタモタと、歩いたり立ち止まったりしながらやって来ます。しかも、雨が降っているのに傘をたたんで振り回していたり、逆さに持ってぐるぐるコマのように回していたりと、とにかく楽しそう。…ということで、冒頭のお母さんの大きな声が飛んでくるという訳です。思い当たる方は、一人二人ではないでしょう?ある時は、傘を開いたまま、なぜだか柄(持ち手)ではなく、先っぽをつまんでぶら下げるようにして歩いてくる子もいましたね。全くどうしてそんなことを思いつくのか、意味がない≠通り越して、意味不明≠ナす。でも、それがその子にとっては楽しくてしょうがないのが見ていてよくわかります。お母さんにしてみれば、「早く歩いて。いい加減にしなさい!」という行動でも、子どもにとっては「そうだ…。いいこと考えた!」ってところでしょう。雨降りの朝に、お母さんとしては面倒極まりない出来事だと思いますが、その駆け引きと親子の好対照な表情を見ていると、申し訳ないことに「子どもってこうなんだよねぇ」「子育てってこういうことなんだよなぁ」と思ってしまいます。そうそう、ちなみに「いいこと考えた!」というのは私の大好きな言葉の一つで「あー楽しかった」「また遊ぼうね」を合わせた三つが私の好きな言葉ベスト3です。実際には口に出して言っていなくても、そう思っているだろうなと感じるだけでとっても嬉しくなってしまいます。どうしてそんなに好きなのか?それは、子どもの言ういいこと≠ノは「なるほど!」と感動する時と「なんじゃそりゃ?」とズッコケる時があり、その落差が面白いのです。いい考えを思いついたとき、目の光が強くなり表情がパッと変わる瞬間にはたまらない魅力があります。そもそも、「いいこと考えた」って口に出して言うこと自体が大人にはないですよね?子どもだけの素敵な世界です。ただ、実はこの言葉が最近どんどん聞けなくなっているのです。それは、子どもが「いいこと」を思いつく前に大人が教えてしまうからです。子ども自身が考える前に、大人が結論に導こうとするからだと思います。つまり、いいことを考えつくためには、それなりの環境が必要だということ。「いいこと考えた」という言葉が聞けなくなるということは、子どもの世界の環境破壊が進んでいて、かなり深刻な状況だと思っています。教育も、子育ても、こどもをどうにかしようと力が入り過ぎ、大人の思うように育てようとし過ぎではないでしょうか?子どもを放り投げたり、放り出したりしてはいけませんが、ある程度は放ったらかすことがないと、子どもはいいこと≠思いつかなくなると思います。
ある日のこと、年中組の男の子が門にやってきて言いました。「先生、指はさんだことある?」私は面白いこと聞いてきたな…と思いながら「うん、あるよ」と答えました。すると続けて尋ねます。「じゃあ、バス乗ったことある?」さぁ、いよいよ面白くなってきました。私はワクワクして「あるよ」と返事します。「じゃあね、洗濯ばさみで鼻はさんだことは?」全く予測ができない世界に突入してきましたね。私は「あるよ」と答えます。「ならさぁ、車にひかれたことはある?」私は「うん、あるよ。小学校一年生の時に交通事故にあったんよ」と答えました。そして、ついに質問が終わる時が来ました。「トランスフォーマー知っとる?」「えっ?それは知らんなぁ…」この瞬間、その子はニヤっと笑います。満足した顔、嬉しそうな表情です。そう、その男の子は「知らない」という答えを待っていたのです。思いつく限りの質問を考えて私を試してみたかったのでしょう。子ども達は園長が何でも知っていると思っていますが、その園長に「まいりました」と言わせたかったんだと思います。わけがわからない質問にはわけがあり、意味のないような会話にも、ちゃんとした意味がありました。また、園長は虫のことは何でも知っていると思っている年長さんもたくさんいます。わざわざ枕詞をつけて「虫に詳しい園長先生!」と呼ばれたりして思わず照れ笑いをしてしまうこともあります。
「これ、なんていう虫?」とよく聞いてきますが、普通の大人より少しは詳しいにしても、さすがに知らないことの方が多く、その時は正直に「わからない」と答えます。先日もある男の子とそんなやりとりがあったのですが、私が「う〜ん、なんやろか?」と答えると、怪訝な顔で「知らんと?」と突っ込みが入りました。私はその子の「何だよ、信頼してたのに…」というような表情に、ちょっと悔しい思いもしたのですが、知らないものは知らないのですから「そうやねぇ、ちょっとわからんなぁ」と答えました。すると、その子は更に「何で知らんと?」と聞いてくるのです。最初に「知らんと?」と言ったときの疑惑の表情は、実は不信感ではなく、「園長が虫の名前を知らないなんて信じられない。知らないはずがない。」という思いの現れだったのです。絶大なる信頼感です。私をこの世で一番信頼してくれているのは、もしかするとこの子かもしれません(笑)。
意味のないことに興味を持ち、わけのわからないことを面白がり、バカバカしいことに熱中する、こどもにはそんな場所や時間がとっても大事です。こどもには…と書きましたが、私は普通の人よりちょっと長い間、高校時代までそれが続き、そのまま人格が形成されてしまったようで、今でも思考が子どもです。でも、そのおかげで彼らと対等に遊んでもらうことができていますので、今の仕事は天職かもしれません。
幼児教育は、難しいことよりも単純なことを見直す必要があります。子ども達には、必要かどうかよりも、やりたいかどうかを、人がどう思うかではなく自分が好きだと思うことを、そして、意味があるかどうかより、面白いかどうかを大事にしながら、たくさんの経験をして、成長していって欲しいと思います。できる・わかるや、評価を優先する世界を知るのは、もっと先でいいと思っています。

絵画の世界 10月号 絵画講師 佐藤巌先生・展先生
2017/10/03

幼児絵画
天使こども園 絵画講師 
さとういわお・さとうのぶ

子どもたちが絵を描くことは、身体の発達と共に創造性や感性を育てることにあります。その為には子どもたち一人一人の発達(発育)の状態と絵画の発達段階を照らし合わせ指導していかなければなりません。年少さんは年少で経験しなければいけない事が沢山あります。年少で年中、年長のような絵を描いても決していいことではありません。時々見かけますが、車やお人形さん等を年少さんとは思えないほど上手に描いている子がいますが、他の絵を描くときは年少さんの他の友達と全く同じように描きます。それは家族の誰からか車やお人形さんの描き方を習っているからです。それより、身体全体を使って、なぐり描きや雨降りの直線や大きな丸、小さな丸などを描いて年少さんの心の発達と一緒に発達段階をふまえて経験を通した絵画指導が大切な時期です。勿論、年少さんで車やお人形さんを上手に描いても無視する方がよい訳ではありません。上手にかけている訳ですから、いっぱい褒めてあげて尚発達段階もふまえて指導していくことが良いと思います。これが、幼児の絵画教育です。
年中、年長さんも全く年少さんと同じで、年少さんで年少の事をしっかり経験して、年中さんでの経験へと進み、年長さんへと進んでいきます。年長さんでは年長での事がちゃんと出来て一年生が迎えられる事になります。幼児期はただでさえ発達が早く、同じ所にいつまでも止まっていません。だからこそ、私たち大人は先々を急いで導くことなく、年少、年中、年長としっかり子どもたちの発達に合わせて経験を確実なものにしていき、バランスのとれた幼児期の生活を送ってもらいたいと思います。 
○ 年少組は身体全体を使って、なぐり描きを中心に色々な絵画の素材を経験していきます。
○ 年中組は描いた絵が私たちにも理解できるような絵になり、自信を持って大きく自己主張をする時期です。
○ 年長組は上、下(天と地)の事も理解でき、少しづつ社会性も生まれ、周りの事にも気が付くようになります。色々な素材を使い分け完成の喜びを知り、明日への積極性が生まれる時期です。
幼児期の絵は私たち大人から見れば、どんなに上手に描いても、まだまだ稚拙です。その絵こそが子どもたちから大人へのメッセージです。子どもの気持ちを理解し、きちんと受け止めてあげる事が大切です。
 11月には作品展があります。子どもたちの絵を観ながら、お子様の心と身体の成長を含めて、お父さん・お母さんとお話が出来る事を楽しみにしています。